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幸福の地から絶望の空へ


サナアを離陸したのは深夜1時。
シャルジャ(ドバイの隣のUAEの首長国)へ向かう機内は空席だらけでガラガラ。
三列シートで横になる乗客もチラホラ。

登場してすぐ、機内説明のアナウンスが入る。
どうやらアナウンスは機械によってリピート再生されている。
僕の座席の後ろに、しっかりとムスリム服とターバンを着用し、白く長い立派な髭を蓄え、皆から「長老!」と呼ばれそうなおじいさんが座った。
機内アナウンスが一巡し、再び最初から流される。
機械によって「こんばんは」という挨拶が流れる。
すかさず後ろの“長老”が、「こんばんは」と声を出して挨拶を返す。
おじいさん、これは機械の声だよと教えてあげたくなる。
でも誰だかわからない人にも、しっかりと挨拶を返すなんて、えらいなと素直に思う。
アナウンスが再び一巡し、「こんばんは」の挨拶からリピート。
再び、後ろから「こんばんは」と長老の丁寧な挨拶が聞こえる。
一回目より声に力が入っている。
「長老!!悪ふざけが過ぎますぞ!!」
と心の中で突っ込んでみる。
そして三巡目のアナウンスに・・・
長老「こんばんは」
「もうええわ!」

長老はきっといい人だ。きっとイエメン人だろう。
と、勝手にイエメン人びいきの考えが浮かんでしまうほど、いつのまにか僕はイエメンを好きになった。
夜のサナアの街は暗く、上空から町の灯りを確認することはできなかったが、それでもよかった。
サユーンからサナアに飛行機で夕方に戻り、深夜の飛行機の時間までサナア旧市街を歩き回って、しっかりお別れをしてきたから。
その際、運良く結婚式の風景も見ることができた。
最後の最後まで「幸福のアラビア」に浸りツ続けることができた。

イエメンの余韻に浸りながら、飛行機の3列シートに横になり目をつぶった・・・。


そして、突然の機体の急浮上で目が覚める。
あまり感じたことのない急浮上の感覚だったが、着陸ギリギリまで寝ていたい気持ちが強く、シートベルトを締め座りなおし、もう一度目をつぶる。

しかし・・・
再び目を覚ましたのは機長のアナウンス。
あまり聞き取れなかった。
多分、何らかの理由で旋回するという内容だと思う。
少し機内が慌しくなる。
機体が傾いている。
女性乗務員が機長室に出入りしたのが見えた。
機体は今までに体験したことがない角度に傾く。
機首が極端に上がったり、そのままの状態で左や右へ旋回したり・・・
乗客たちの表情も変わってきている。

ななめ後ろの通路を挟んで向こう側の座席に座っている乗客が、僕の後ろの長老と話している。
話しに割り込んで、機長が何と言ったのか聞く。
すでに機体は左、右に旋回しているのではなく、なんとか平行に安定させようという動きに変わっている。
そして、それができず、左、右に傾き続けたり全く安定しない。
機首と尾翼のバランスもおかしい。
スピードも出ていない。
明らかに空をさまよっている。それ以外に表現のしようがない状態。
長老と話していた乗客が答える。
「何でもない」
こういう状況で一番欲しくない答えだ。何でもないはずがない。
現に、俺とあんたの目線の高さが全然違っているだろう!と思うが、言葉が出せない。
明らかに何か異変が起こっている状況での「何でもない」ほど、怖いものはない。
ただ、明らかに取り乱し始めた僕を、なんとか落ち着かせようとしてくれているのがわかる。
「本当に何もないのか?」と聞き返す僕の言葉にかぶせる様にして、すかさず、「どこの国から来たんだ?」「次はどこへ行くんだ?」「イエメンはどうだった?」などと、聞き返してくる。
全ての質問に一言の短い返答をし、「本当に大丈夫なのか?」と何度も聞く。
「大丈夫だ。何もない。」と何度も笑顔で答えてくれる。
おじいさんも何かを話した。
チラッと「インシャアッラー」と聞こえた。
イスラム教徒がよく使う言葉だ。
神のみぞ知るといったような意味だ。
こんなときにそんなこと・・・。
でもこんなときだから、なのか・・・。

祈り始め、ブツブツ何かを唱え続けているムスリムがいる。
やっぱりそういう状況になってきているんだ・・・
向かい側の座席には、窓の外を見て絶望的な表情を浮かべ天を仰ぐ乗客もいる。
逆の翼に異変が見えるのか!?と不安になる・・・
通路に顔を出し、後方に座る男性乗務員の様子を見てみる。

どこかとつながっている電話で話をしている。
機長室だろうか、空港の管制塔とかそんなところだろうか・・・
その話が終わり受話器を戻すと、下を向き両手で頭を抱えはじめた。
表情は歪みイラついているように見える。
落ち着きがない。

やめてくれ・・・

僕は震えが止まらなくなる。
のどがカラカラでつばが飲めない。
窓の外を見る。
夜中の真っ暗な空と、少し欠け始めた月が見える。
空の色が変に見える。
飛行機の挙動がおかしい。
陸から離れ、海へ向かっている。
尾翼が大きく見える。極端に傾いているせいだ。
今は機首が前に傾き、つんのめっている。
シートベルト着用サイン点灯の時になる音が、連続で機内に響き渡っている。

こんな、どこだかわからない空で・・・
こんな閉じ込められた場所で・・・
自分ができることは何一つない。

認めたくない現実に襲われる。
こわい・・・
“それ”が目の前に迫って来ている。
自分がそれに完全に押しつぶされているのがわかる。
心を静めても受け入れることはできない。
“覚悟”なんてできるわけがない。
大丈夫だろうと思おうとしても、目で見て、体が感じている、この状況という現実にいとも簡単に飲み込まれる。

また水を飲むが、まったくのどが潤わない。
体も震え続けている。
飛行機墜落事故の後に発見された、震えた字での遺書をテレビで見たことがあるが、遺書を書くという余裕なんてない。
書きたくないのではなく、字を書けるほどに落ち着くことができない。

誰か、お願いだから、大丈夫だと言って欲しい。
・・・助けて欲しい。
誰に願えばいいかもわからない。

言葉の通じない、話したこともない異国の乗客たちの目に助けを求める。
「なんでそんなに怖がっているんだ?心配するな、大丈夫だ」
先ほどの乗客と、長老が声をかけてくれる。
僕が欲しいのは、そういう気休めの「大丈夫」じゃない・・・
そしてまた、世間話を振ってくる。
短い一言の回答をするのがやっと。

もう一度、後ろの男性乗務員を見る。
「シートベルトをして動くな」とイライラした表情で言われる。
じゃあ、あんたももっと落ち着いて、安心させるようなしぐさや表情をしてくれ。

いつ堕ちるんだろう。
たまに少し機体が沈み、胃が浮く。
「きた」と、その度に思う。
もうこの飛行機は、ただの鉄の塊だ・・・

しばらくして、機内放送が入り、乗客がみな顔を見合わせながら耳を傾ける。
どうやら、違う空港に着陸を試みるということらしい。
フジエラという地名だ。
聞いた事もない空港だ。
飛行機が大きく旋回するが、そのスピードはものすごく遅く、飛行機の傾きの角度もきつい。
飛行機が苦しんでいる。
フラフラしながら少しずつ高度が下がる。

やっと滑走路が目に入る。
もう少し・・・。
いつも感じる着陸のときとは違った感触が腰から伝わってくる。


助かった・・・
生きている。
他の乗客の表情もやわらぐ・・・
「ほら大丈夫だったろう。」と後ろから声が掛かる。
少し涙が出る。
まるで昔からの知り合いのように感じる。

危うく地獄へ向かいかけた飛行機を降りる。
降りる際、前のほうの座席を見ると、荒れている様子の席がいくつかあった。
揺れによるものか恐怖によるものかわからないが、嘔吐している人もいたようだ。
コックピット付近には数人のエンジニアがうろついていた。
原因はまだ教えてくれない。

着いた空港は、アラブ首長国連邦の首長国のひとつ、フジエラという場所だった。

その後の飛行機会社の対応には驚いた。
なんと、2時間後、同じ飛行機で本来の目的地シャルジャまで再び飛ぶという。
原因は天候で、飛行機は問題ないという。
たとえそれが本当だとしても・・・同じ飛行機に・・・!?

数人の乗客が、空港から外へ出て行った。
乗客の1人のムスリム女性と話すと、彼らは搭乗拒否をして出て行ったそうだ。
当然だろう。
その女性も同じ飛行機に乗るのは怖いという。
しかし、お金がないし、乗るしかないという・・・

少し悩んで考えたが、どうしても同じ飛行機に乗る気にはなれず、タクシーで予定地のシャルジャまで行くことにした。
次の向かうべき場所はシャルジャではなく、シャルジャの隣町のドバイなのだが、預けていた荷物をフジエラで降ろすのは無理だそうで、着陸予定地のシャルジャ空港まで荷物だけを取りに行くしかないと言われたからだ。

結果的にその飛行機は無事にシャルジャまで飛んできたが、この判断は間違っていなかったと思う。

シャルジャに向かうタクシーの中で、僕は体に巻きつけていたお守りに気づいた。
僕のたびの安全を祈ってお守りをくれた人が何人かいた。
それを貴重品と一緒にいつも体に巻きつけていた。
何かを祈るときや願うとき、お守りがあれば、お守りに願いを込めるはずだけど、今回の飛行機内では、本当に何も考えることができず、お守りが自分の体に巻きついていることも忘れていた。
それでも、助かったのは、このお守りたちのおかげでもあると思う。

今回、死ぬかもしれない状況に突然追い込まれ、何もできず脅えることしかできなかった。
そんな状況でも、人を励ませる人、落ち着いていられる人たちは、本当に強いと思った。
自分が、自分の奥さんや子どもと一緒に乗っていたら、彼らのように落ち着いていられたのだろうか・・・
家族の恐怖をやわらげてあげることができたのだろうか・・・
強く手を握って家族の震えを止めてあげることができたのだろうか・・・
ましてや、今回の場合、彼らから見たら、僕は異国の異教徒。他人の中の他人だった。

イスラムの教えによる強さなのか、単に人間が大きいからなのかはわからないが、あんな状況でも他人に気を配れるほどの精神力の強さが彼らにはあって、僕にはまだまだなかった。
自分はなんて弱くて、なんてちっぽけなんだ。
もっと強くなりたいと思った。


着陸後、飛行機から歩いて降りるとき、機内で着陸まで脅えていた僕を見ていた一人の男性が最後に声をかけてきた。

「ONE LIFE ,ONE DAY」

人生なんて一日のようなもの。
短く儚い。
ジタバタしても仕方がない。
そんなに力を入れずに、流れに身を任せよ。
僕はそう解釈した。

素晴らしい言葉だと思うけれど、そうだとしても、そんなことも、いま無事生きているから言えること。
それだけで、ありがたいことだし、それだけで十分だ。

生きていて、よかった。



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Comment

ありがとうございます!

>じゅりさん
ほんとよかったです・・・。
ほんとの意味で、「死ぬかと思った。」
ほんとお守りのおかげさまです。
ちゃんと頑張って生きて帰ります!!

  • りょーじ [#-] |
  • URL |
  • 2009 04/17 (Fri) 23:57
No Title

よかったぁー(iДi)

最初はドキドキで
途中からは
『早くオチ言ってょ~ぉ・・・』
とか完全にビビッて心の中で言ってた。

これからも、そのお守りに守られて
無事日本に帰って来てくださぃ('A`)

  • じゅり [#-] |
  • URL |
  • 2009 04/17 (Fri) 17:59
コメントありがとうございます!!

>ボンドさん
ご名答です。エアアラビアです。
フライト1か月前に、勝手な日程変更もありましたし・・・
イエメンの韓国人旅行者のテロのときも、ちょっとニアミスしてました。
長く旅してると危険への感覚が麻痺してくることもありますよね。
飛行機は特種な例ですが、これを機にまた気を引き締めます!!



>まやさん
飛行機って、ほんとは怖いんだなって思いました。
乗り継ぎでその日のうちに、また飛行機乗らなきゃ行けなかったので、飛行機怖がってる暇なんてなかったけど・・・
寿命(今回、死ななかったけど)を知らされる怖さは少しわかった気がします。
落ちる確率なんてメチャクチャ低いし、LANは大丈夫ですよ!
これからイースターなんですね!
ゆっくりまったり楽しんで来てください!

  • りょーじ [#-] |
  • URL |
  • 2009 04/16 (Thu) 05:31
ドキドキした…。

ブログがアップされてるんだから、生きてるのは分かってたけど。
それでも、ドキドキした…。 怖い(>_<) 生きててよかったね。
ホント。 これで死んだら、家族が辛すぎる…。

人間いつ死ぬかなんて、分かんないもんね…。
職業柄、病気で亡くなる人はいっぱい看てきたけど。
交通事故ってのは、一瞬だもんね…。
明後日(17日)、イースター島に飛行機で行くんだけど。
ああ…。 ああ…。 怖いやんけぇ(+o+)!!!!

  • まや [#-] |
  • URL |
  • 2009 04/16 (Thu) 02:56
怖いねー

たしかそれって中東の格安航空会社だよね。
アラビアエアーだっけ・・?
遅延も多いみたいだし、そう言う話を聞くと、
ほんと怖いね。
飛行機事故で死ぬこともあるけど、
世の中にはそれ以上に死ぬ確率が大きい
ことが多いわけで、特に旅中は気をつけて!
また元気に再会しましょう。

  • ボンド [#-] |
  • URL |
  • 2009 04/15 (Wed) 17:51
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原田 諒二                                     (はらだりょ-じ)

Author:原田 諒二 (はらだりょ-じ)
あの海の向こうには何があるんだろう?
どんな人たちがいるんだろう?
そんな単純な想いを胸に
いろんなものを見て
いろんな人と触れ合う旅の
真っ最中!!

2008年10月21日 世界一周出発

2009年9月28日 帰国

2015年1月2日 世界二周目に出発!!

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